地球の平均気温が、ここわずか100年の間に、約0.74度も上昇したということが分かっています。0.74度という温度は、12万5000年前の氷河期と、現在の平均気温の差がたった5度ということを考えてみると、0.74度という温度のもつ深刻な意味が伝わるでしょう。
現在、WWFは地球温暖化の原因となる二酸化炭素などの排出抑制による地球の平均気温上昇を、産業革命以前のレベルと比べ、2℃未満に抑制するための活動に取り組んでいます。
そのため、世界各国のネットワークを活用する「WWF気候変動プログラム」において、温室効果ガスの排出大幅削減に関する国際協定を、各国政府と締結した上で、産業、金融、そして一般市民などから意見などを集めるための活動を世界各地で展開しています。
地球温暖化の最大の原因である二酸化炭素は、現在も人間の活動によって増加しており、地球全体の森林などの生態系が吸収可能な量の倍以上になってしまっています。そのため、今後100年を見通すと、最大6.4度の気温上昇が予測され、すぐに排出削減に取り組まなければ、地球の将来が危うくなるのです。
地球温暖化問題は、それぞれの国の責任のあり方や、国内事情などを超えて、全人類共有の課題として取り組む必要があります。地球温暖化をストップさせるためには、省エネ推進や、代替エネルギーの開発利用が必要です。
WWFではこの目標に向けて、地球の平均気温上昇を産業革命以前のレベルに比べ2度未満に抑制するために「京都議定書」を根拠とする取り組みや、排出削減の将来枠組みに関する交渉などに取り組んでいます。
京都議定書加盟先進国全体での国際協定の取り決めでは、2008年から2012年までに、1990年時点の排出量から5%二酸化炭素排出を削減するというものでした。WWFでは、この京都議定書の定めを、それぞれの国レベルで責任が果たされ、2013年以降も、議定書の内容を基に大幅な削減が確実実行されるための枠組みの世界的合意形成を図っています。
企業による経済活動に対する啓発活動は地球温暖化の解決にとって不可欠な重要な取り組みです。世界の企業の意識自体を変革する必要があり、WWFでは、先進的な環境対策推進に取り組んでいる、世界の数々のリーディング企業に対して、「クライメート・セイバーズ・プログラム」というより積極的な温室効果ガスの排出削減活動を展開しています。このプログラムへの参加企業は増加しており、企業との協力し関係に基づき、発展的で積極的な総量削減目標達成が実証されています。
国民や消費者の主体である一般市民側からの要請は、企業や国の行動自体を変える大きな原動力です。WWFでは、調査活動による温暖化が生物多様性に与える影響やその結果などの成果の普及を図り、世界的な啓発広報活動を行い、政治や経済の世界を動かすための声を民間からあげてゆくための活動に取り組んでいます。
このような地球温暖化の影響に関する調査と、温暖化の悪影響に対する抵抗力をつける活動である「適応」の両方に取り組むことで、効果的に環境に関する目標を達成するための努力が行われています。
異常気象による被害や海面上昇による海岸浸食、北極圏の氷の激減など、温暖化の悪影響は、すでに世界各地に現れています。WWFでは、この温暖化の悪影響に関する調査を行ない、「温暖化の目撃者」や、「ホッキョクグマの衛星追跡調査」などを通じて、温暖化の脅威を広く伝え、社会の意識を変える活動を、率先して行なっています。WWFでは、適応に関する調査にも世界各地で取り組みながら、国際交渉を通して、例えば、将来のエネルギー構想であるエネルギー効率改善とエネルギー転換のための視点や温暖化の影響をより強く受ける途上国に対する適応支援といった視点も含めて活動に取り組んでいます。