エコロジーとは

エコロジーとは何でしょうか。エコロジー(Ecology)とは、本来は「生態学」という意味があります。生態学とは私たち人間を含めた地球上の生物と地球環境が、どのように相互作用を及ぼすかを研究する学問のことです。例えば地球上に存在するエネルギーの流れを研究したり、地球の生産量を高めるための研究をしたりといった内容が生態学の主流でした。簡単にいえば、地球と人間の相互関係を研究するための学問だったのです。しかし人間の工業技術の高まりにともなって、生態学は人間の生産活動が地球環境にどのように影響を及ぼすかに重きを置くことになります。

これは特に工業において、有機化学が発達したことと深い関係があります。有機化学の発達により、それまでエネルギーとしての利用が主であった石油から、プラスチックやビニールが生産されるようになりました。また穀物の生産量を高めるためDDTなどの農薬も製造されるようになります。こうした物質は、当初環境に悪影響を及ぼすとは考えられていませんでした。しかし工業廃液による汚染やDDTなどの農薬による土壌汚染の問題が発生した結果、これらを解決する手段として生態学つまりエコロジーにスポットライトが当てられることになったのです。

環境問題が取り上げられ始めたのは1960年代のことですが、このころのエコロジーには「近代文明を否定することによって地球環境を守ろう」という流れがありました。代表的なものがヒッピー運動です。ヒッピーは近代的な工業化社会を否定し、先住民などの生活スタイルに回帰するムーブメントでした。現在の自然保護活動家のなかにも、ヒッピー運動からの流れをくんでいる方も多いと報告されています。ヒッピーのムーブメントは一時的なものでしたが、1980年代のヨーロッパの反原発・反捕鯨運動などの政治運動につながったのは間違いないでしょう。つまりエコロジーは政治的なメッセージを持つことになったのです。

ここまでエコロジーの歴史を考えてみましたが、エコロジーは本来の学問としての役割から次第に離れてしまったことが理解できると思います。現在、エコロジーという言葉は学問や政治の世界を超え、さらに広い範囲で使用されています。例えば広い意味で「環境に優しそう」な商品のキャッチコピーに使用されています。また電化製品のキャッチコピーにもエコロジーは高い頻度で登場します。こうした背景を考えると、「公害を出さない」「地球環境を守る」「健康に良い」など、現代のエコロジーは様々な意味を持っています。しかし「エコロジー」の本来の意味は、「地球環境と人間の調和を知るための学問」であることを覚えておいていただければと思います。

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